Field Study of International
Business Department

国際経営学科のフィールドスタディ

2022年度 海外フィールドスタディ(台湾) 実施報告

2022年度 教員による海外フィールドスタディ(台湾)報告 : 西原 博之

2022年度の海外フィールドスタディには、国際経営学科生が7名、経営学科生が2名の合計9人が参加した。なお、そのうちの3名は中国人留学生である。海外フィールドスタディによる台湾への渡航は、新型コロナ拡大の影響を受け、先回の2019年夏から3年半ぶりの挙行となった。

今回は、旧暦正月明けの2月中旬に、東京羽田から台北松山に向った。時差が一時間あるものの、午前中には台湾に到着、MRTを乗り継いで台北の中心街にある師範大学の宿舎に到着、チェックインまで時間があったので、近くにある台湾グルメを頂き、初日はゆっくり過ごした。

翌日より国語教学センターが開講する台湾・華人に関する特別講義に参加した。明学卒業生で台湾滞在歴の長い東呉大学の長田先生に「日本人教師がみた台湾社会」という内容でお話をうかがった。午後は日本台湾交流協会を訪問、愛媛県から来ている担当者から「日台友情」という活動を進めており、その活動と成果についてお話があった。3日目は特別講義の続きで、師範大學の楊先生より、中華文化と台湾の風水の事例について、お話があった。午後は、台湾味の素を訪問、戦前より台湾で事業が行われていたこと、現在は、ほんだしが中国や台湾など、中華圏の市場で受け入れられているが、そこでのヒット商品が一部日本に逆輸入され、注目されていることなど、話をうかがった。4日目は、中国文化大学に赴いた。近くに風光明媚な場所があり、2月中旬とはいえ、キャンパスには梅や桃の花が咲いていた。同大学では、陳国際部長、林アジア課長から出迎えを受け、これから日本に留学する学生らと交流した。

5日目は、来年オープン予定の国立鉄道博物館準備処を訪れた。日本統治時代の整備工場や従業員専用浴室跡、展示予定の日本で引退した寝台客車、敷地内を移動する往年のディーゼルカーに乗車した。後に、2月にオープンしたばかりで、台湾車輛公司が製造した路面電車(LRT)の工廠を見学、車庫に待機していた列車に乗って一般路線に合流、工廠を後にするという貴重な体験をさせてもらった。その後、味の素の子会社で化学材料を生産している台素社を訪れた。同社は親会社の技術を生かし、衣料材料から半導体の材料を生産しており、台湾拠点で事業を行っている。

6日目は、王金河医師の生涯について、遺族から台湾南西部の風土病の治療に医者として尽くした半生から、明治学院大学から名誉博士号を授与されたことについてうかがった。午後は、協定校である東呉大学に出かけ、シティキャンパスでは国際経営学科との交流、午後は、留学プログラムに参加する学生が学習する華語センターを訪れ、学生に出迎えてもらい、教室や施設などを見学した。後に、日本語学科に赴き、明学OBの長田先生、その学生らと交流、その後、近くの士林ナイトマーケットに出かけた。7日目は、「中華伝統思想と台湾企業の経営管理」というテーマで元培医亊科技大学の周先生より講義があり、台湾のIT企業の多くが生産拠点づくりに、中華伝統思想を応用している事例を消化してもらった。午後は、完工当時、世界で最も高いビルとなった台北101の近くにあるブリーズモールを訪れた。そこにある高級スーパーマーケットに日本の食品を卸しているファブリッジ台湾の顏代表に、店舗で販売されている日本の果物や野菜、食品や調味料などの紹介があった。

8日目は、午前中に週末に開催される建国花市場に出かけ、胡蝶蘭や亜熱帯や熱帯の植物で知られる鮮やかな花が販売されていた。他にも、ラッキーグッズ等も多く展示されていた。午後は、ブリーズモールの本店を訪れ、同社の企業博物館を訪れ、担当者に案内してもらった。ブリーズスーパーでは、店長及び担当者が店内を案内、野菜のパッキングなどをするバックヤード、倉庫兼会議室に案内され、お話を聞きながらプライベートブランドとして販売している古早茶、ドライフルーツを試食させてもらった。

9日は台北最後の日である。宿舎をチェックアウトして、スーツケースを持って台湾モスバーガーを訪れた。台湾人の生活に溶け込んだ商品の提供、ビジネスを展開していることがわかった。その後、台北駅に向かい、高速鉄道(新幹線)で台南に向かった。台南ではもう1つの協定校である長栄大学を訪れた。日本語学科の河村先生と学生らが出迎えて頂いて交流をした。その日遅く、台南のホテルにチェックインした。

10日の午前中は、キッコーマンと統一グループとの合弁企業に対して、オンラインによる企業概要と質疑応答を行った。午後は、大航海時代に台湾が貿易の拠点として栄えた安平(アンピン)という街に出かけ、ゼランディア城跡、当時の貿易商館などを見学した。

11日は南台科技大学に出かけ、黄マーケティング及び流通学科主任に挨拶し、蔡教授の学生と交流、後に同大学卒業生の方を招いて、簡単に楽しめる台湾ウーロン茶を味わった。その後、王金河紀年館を訪れ、医師の生涯について、台湾南西部の風土病の治療に尽くした半生について、その建物や展示で確認し、明治学院大学から名誉博士号を授与された際に授与された際の賞状やガウンの展示を発見した。後に、烏山頭ダムに行き、八田与一の銅像や珊瑚湖を見学した。

12日は、バスで台湾最南端にある鵝鑾鼻(ガランピ)岬に行って灯台に行ったり、近くの白沙湾、南湾、太平洋が望める龍磐公園にも寄り、台湾海峡、バシー海峡、太平洋に面する台湾の地理的な重要性を確認した。 

13日は最終日である。午前中に奇美グループの観光工場を訪れ、同社で生産され、日本で販売されている肉まんやパイナップルケーキなどの製造機械やその工程の説明を聞いた。後にHSR台南駅に向かい、新幹線に乗車して台北に到着、台北からは地下鉄を乗り継いで台北松山空港に到着、チェックインして東京に帰国した。

今回の海外フィールドスタディは、諸事情があってスケジュールに休日を設けなかった経緯がある。そのため、参加メンバーの中には途中で体調を崩した者、幾つかのプログラムに参加できなくなった者、同じ航空便での帰国をあきらめた者もいて、海外フィールドスタディの活動では、あらためて健康管理の大切さを実感した。なお、今回の海外フィールドスタディでは、台湾滞在の本学OBはもとより、すでに国際経営学科留学プログラム、大学の交換留学で台湾に滞在する本学学生にも声をかけ、一部プログラムに参加するなどして交流を図った。加えて、来年度より、フルブライト招聘教授として本学で教える、米国ロバートモーリス大学のペン・ジェイコブ教授の出身である台湾で再会を果たすなど、人の交流という点において充実していたといえる。まさに、このことが台湾における交流の醍醐味といえる。

最後に、2020年に新型コロナが日本やアジアで拡大し、3年以上に渡って国を往来する国際交流が途絶えた。その中で、今回、中にはオンラインによる訪問であったり、直接訪問してもマスクをしながらの交流など、少しぎこちない部分があったといえる。しかし、多くの企業、大学は我々の申出を受け入れて頂き、予定通りに交流できたことに感謝申し上げます。また、今回、中国人留学生の参加に対して、彼らは台湾において「研修」という名目での渡航しか認められなかった。この件に対して、台北駐日経済文化代表処東京事務所の教育関係者からアドバイスを頂いたこと、また、我々の受入先となって頂いた国立台湾師範大学の関係者には辛抱強く対応して頂き、時として我々に直接アドバイスを頂くこともあった。なお、ぎりぎりになったものの、最終的には希望者全員がビザを取得、無事に渡航できたことに対して、関係方々にこの場を借りてお礼を申し上げます。

実施プログラム

2023年2月12日-2月24日

第1日
2/12(日)
午前 羽田国際空港第3ターミナル、チェックイン(I&J)
午後 (CI-223)7:55-10:55 台北松山国際空港着、師範大学推拡部 宿舎到着
第2日
2/13(月)
午前 講座(1)長田正民講師「日本人教師がみた台湾社会、日台交流、今後の展望」
午後 日本台湾交流協会訪問
第3日
2/14(火)
午前 講座(2)楊秉煌講師「グローバル化と中国人、世界の華人社会入門」
午後 台湾味の素訪問
第4日
2/15(水)
午前 中國文化大學、国際及び両岸事務所訪問
午後 中國文化大學、日本文学学科及び観光学科との交流
第5日
2/16(木)
午前 国立鉄道博物館準備処、安坑輕軌(LRT)車両基地見学
午後 台素公司(味の素関係会社、化学材料関係)訪問
第6日
2/17(金)
午前 講座(3)烏腳病紀念館、「明治学院大学名誉博士、王金河医師の生涯」
午後 東呉大學商学部国際経営学科、日本語学科と交流、華語センター見学
第7日
2/18(土)
午前 講座(4)周志川講師「中華伝統思想と台湾企業の経営管理」
午後 ブリーズスーパー南山店、日系ファブリッジ台湾事務所対応
第8日
2/19(日)
午前 建国南路、休日フラワーマーケット見学
午後 ブリーズモール本店、ブリーズスーパー復興店訪問
第9日
2/20(月)
午前 台湾モスバーガー(摩斯漢堡MOS・安心食品服務)訪問
午後 台湾新幹線(HSR833)台北―台南、長榮大學訪問、交流、台南ホテル到着
第10日
2/21(火)
午前 統萬(キッコーマン)合弁企業、オンラインによる企業紹介と質疑応答
午後 台南安平見学、大航海時代オランダ古城、安平老街、貿易商館跡等
第11日
2/22(水)
午前 南台科技大學訪問、南台科技大學流通及びマーケティング系と交流
午後 同大学卒業生開講の台湾茶講座、烏山頭ダム見学、八田与一銅像、神農街
第12日
2/23(木)
午前 台湾最南端墾丁公園 、白沙湾、鵝鑾鼻(ガランピ)灯台、南湾
午後 龍盤公園大草原(太平洋岸)、台南市街地
第13日
2/24(金)
午前 奇美食品観光工場、台湾新幹線(HSR636)台南-台北、MRT台北駅-
午後 台北松山空港 (CI-222)18:25-22:05 羽田空港着、解散

PHOTOレポート


  • 出発当日、雲から顔を出した富士山を眺め台湾に向かった。

  • 東呉大学長田先生による「日本人教師が見た台湾社会、日台交流」についての講義の様子。

  • 日本台湾交流協会台北事務所を訪問、広報担当の川田氏より「日台友情」プロジェクトの紹介があった。

  • 台湾味の素を訪問、台湾や中華圏では異なる味付けの調味料が人気とのこと、一部は日本に逆輸入されているものもあるという。

  • 中国文化大学の先生から大学紹介や国際交流の取組みについて説明があった。特に費用面から同大学への留学はおススメとのことだった。

  • キャンパスから台北の街が見下ろせる場所は特に夜景が綺麗とのこと。同大学の教員、学生と一緒に記念写真を撮影。

  • 鉄道博物館(準備処)にある台湾鉄路(TRA)往年の車両を背景に、台湾車両公司の李副社長と記念写真を撮影。

  • 2023年2月開通のLRT(路面電車)の車両基地を訪問、担当者から車両メンテナンス作業の話を聞いた(キャンペーン期間の1か月間は同区間の運賃は無料とのこと)

  • 台素の徳永総経理より、親会社である味の素の技術を活かし、ITメーカーなどに材料を供給するなど、台湾を拠点に事業展開している旨、紹介があった。

  • 本学は2011年12月に王金河医師に名誉博士号を授与した。その遺族から、父である王医師が台湾の故郷で風土病の治療に尽くしたこと、それを支えた母、治療に係った方々の支援についての講義を頂いた。
    ※下記URL参照

  • 東呉大学シティキャンパスを訪問、阮商学部長(左側2人目)と同大学のスタッフが出迎えてくれた。

  • 東呉大学商学部の国際経営與貿易学科と交流。参加した教員、学生と一緒に記念写真を撮影。
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  • 東呉大学メインキャンパスに移動し、華語センターを訪問、そこで学ぶ留学プログラムの本学国際経営学科生が出迎えてくれた。王センター主任の案内で教室や施設を見学した。
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  • 東呉大学日本文学科を訪問、東呉大学の学生に自己紹介をする本学学生の様子。
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  • 東呉大学の長田先生とその教え子である日本語文学科生と台湾最大級の士林夜市に出かけ、ナイトマーケットにある屋台料理を味わった。
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  • 元培医亊科技大学の周講師より、台湾大手IT企業が中国伝統思想を企業のマネジメントや意思決定に応用する背景、その事例などについて紹介があった。
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  • ファブリッジ台湾の顔代表より、微風スーパーに卸す日本の野菜や食品などを棚の中から確認し、商品の特徴、販売価格、消費者層などについて説明があった。
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  • ブリーズモール本店、微風スーパーの総店長及び担当者に売場やバックヤードを案内してもらい、プライベートブランドである古早茶などを試食させてもらった。
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  • 台湾モスバーガーの事務所を訪問した。モスバーガーをはじめ、台湾には多くの日系フランチャイズチェーンが展開していることについて担当者から紹介があった。
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  • 高速鉄道でHSR台南駅に到着、在来線に乗り継ぎ、長栄大学に到着、タピオカミルクをご馳走になりながら、同大学日本教育センターの河村先生、その学生と交流した。
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  • キッコーマンは台南に拠点を置く統一グループと合弁事業を展開している。今回は、グループの方針でオンラインによる開催となり、企業説明と質疑応答を行った。
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  • 台湾最古の商店街といわれる安平老街を訪問、大航海時代には欧州の貿易船や外国人商人が多数往来したといわれる。今やその場所は地元の観光名所となり、台湾名物の「肉乾」(ポークジャーキー)が販売されていた。
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  • オランダ統治時代に建てられた安平古堡(ゼ―ランディア城跡)を見学、本学経済学部が招聘した台湾出身のペン・ジェイコッブ(Prof. Peng, Jacob)教授も飛び入りで活動に参加した。
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  • 南台湾科技大学を訪問、管理学部の黄流通及びマーケティング学科主任を訪れた後、同学科の学生と交流した。
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  • 南台湾科技大学の荘助理教授の教え子が講師となって簡単に味わえる台湾茶の講義に参加した。講師は茶葉を生産、加工しているが、彼の師匠は彼の母とのことであった。
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  • 台南北門にある王金河紀年念館にある教会の前で牧師と一緒に記念写真の撮影、記念館の展示場に故王金河先生が本学に来校、名誉博士号の授与式での賞状、ガウンなどが飾られていた。
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  • 日本の統治時代に八田与一が設計、建設に携わった烏山頭ダムを見学。地元ではダム完成により台湾南部の嘉南平野を実りある大地に生まれ変わったことで知られる。
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  • 墾丁国家公園にある台湾最南端を示すガランピの石碑を背景に記念写真。他にも、灯台、白沙湾、南湾を訪れ、南国の台湾を満喫した。
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  • 台湾南端の墾丁国家公園から少し太平洋側を北に上った龍磐公園大草原を訪れた。太平洋から吹き付ける大自然の強い風に驚かされた。
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  • 奇美食品工業の観光工場を訪問。中国語による担当者の説明に対して本学留学生が通訳、解説をしていた。

※関連URL
2011年12月8日「烏脚病」の治療に尽力した医師、王金河(Wang King-Ho)氏に明治学院大学名誉博士学位を授与します